生徒がAIにした質問から思考の過程を読む|AIとのよい対話の特徴
生徒がAIにした質問には、その生徒が何をわかっていて、どこでつまずいているかが表れます。AIとのよい対話では、生徒が自分の考えを先に示し、AIの答えを確かめ、問いを絞り直しながら進みます。課題文をそのまま貼る、結論を決めてもらうといった質問は、不正の証拠というより、立場や根拠がまだ定まっていないつまずきのサインとして読むことができます。
Cognityは、生徒が生成AIと一緒に課題に取り組む過程を記録する、AIの可視化ツールです。この記事では、生徒の質問を読むための「よい質問のサイン」と「丸投げのサイン」を5つずつ例とともに紹介し、ルーブリックの観点と振り返りへの生かし方までをまとめます。
生徒の質問から見えること
生徒の質問からは、課題について何を考え、どこで迷っているかが見えます。文部科学省のガイドラインは、生成AIを学びに使う前提として、指示文(プロンプト)で出力をさせ、その「真偽や適切性を的確に判断できること」を挙げています。※1 そのうえで、「問いを立て続けること」がこれまで以上に重要になるとしています。※1
同じガイドラインは、教師の役割として「丁寧な見取りと支援」を挙げ、生成AIの時代にはそれが「より重要なもの」になるとしています。※1 反対に、AIの答えを「鵜吞みにしたり」すると、「必要な学習過程が省略」される恐れがあるとも述べています。※1 生徒の質問は、この二つのどちらに近い使い方をしているかを確かめる手がかりになります。
研究でも、AIへの頼み方によって学びが変わることが報告されています。大学生がPythonを学ぶ実験では、解答を作らせる使い方は学べる範囲を広げても一つひとつの理解を浅くし、説明を求める使い方は理解を深めていました。※3 この研究は、学生がAIに送ったメッセージを一つずつ分類して使い方を見分けています。
高校生の質問を分類した国内の研究もあります。高校2年生が生成AIに送ったプロンプトを「共有型」「依頼型」「対話・協働型」に分け、その分類が「生徒の到達度評価に転用できることの可能性」を示しました。※4 プログラミングの授業での小規模な研究ですが、生徒の質問を評価の材料として読めることを示しています。
質問と文章をまとめて残す方法
生徒が別のアプリで生成AIを使うと、先生の手元に残るのは生徒が選んで提出したやりとりだけです。ガイドラインはやりとりの過程を「参考資料として添付させること」を挙げていますが、※1 どの部分を添付するかは生徒が決めます。質問と文章の両方を、選ばれる前の形で残す方法が必要です。
生成AIを使う場所と文章を書く場所を一つにすると、質問は選ばれる前の形で残ります。Cognityでは、生徒は課題の中でJelloと対話しながら、「アイデア」「執筆」「改善」「提出」の段階を進みます。先生は採点画面の「会話」「アクティビティ」「ルーブリック」の各タブで、その過程を確認できます。このあとのサインの例には、実際の画面を添えています。
「自作率」カードは、文字を単位に計測します。画面の説明のとおり、「Jelloの発話と20文字以上連続して一致した部分をAI由来とみなします。」
CognityはAIの検出も、スコア付けもしません。示すのは会話と書く過程の記録で、どう評価するかは先生が決めます。
文章だけから生成AIの使用を見抜けるかどうかは、AI検出ツールで生成AIの使用は見抜ける?で説明しています。
課題の作り方から過程の確認まで、学校での使い方は学校向けCognityでご覧いただけます。
よい質問のサイン5つ
よい質問は、生徒自身の考えを材料にしています。AIに考えを代わってもらうのではなく、自分の考えを試したり広げたりするために尋ねている質問です。
以下の例は、高校1年生の国語で「高校生のSNS利用時間を法律で制限すべきか」という意見文を書く場面を想定した作例です。
よい質問のサイン5つ(例は作例)
| サイン | 生徒の質問の例 | 読み取れること |
|---|---|---|
| 1. 自分の考えを先に示した質問 | 「私は法律で一律に制限するのには反対です。必要な使用時間は人によって違うと思うからです。この理由の弱いところはどこですか?」 | 立場と理由をもち、それを点検しようとしている |
| 2. 反対の立場を求める質問 | 「賛成側の人が一番強く言いそうな根拠を一つだけ教えてください。」 | 反論を想定して主張を組み立てようとしている |
| 3. 根拠や出典を確かめる質問 | 「さっきの『睡眠時間が減る』という話は、どんな調査に基づいていますか?自分で確かめられる資料はありますか?」 | AIの答えをそのまま受け取らず、真偽を確かめようとしている |
| 4. 答えを受けて絞り直した質問 | 「『制限』といっても時間と年齢で話が違うと気づきました。夜の時間帯だけ制限する案に絞ると、どんな問題がありますか?」 | AIの答えから論点を見つけ、問いを立て直している |
| 5. 自分の文章の一部に絞った質問 | 「第2段落の主張と根拠がつながっているかだけ見てください。直さなくていいので、つながっていない所を教えてください。」 | 書いた後に、直すのは自分だと決めて助言を求めている |
五つに共通するのは、質問の中に生徒自身の考えや文章があることです。ガイドラインが「生成AIに全てを委ねるのではなく自己の判断や考えが重要」としている使い方が、質問の形で見えています。※1
Cognityの採点画面では、この見方を生徒ごとにまとめた「AI活用力」カードが表示されます。生徒がJelloとどう協働したかを文章で記述し、委任・説明・見極め・誠実さの4項目の段階を示します。各項目の根拠は、カードの下のリンクからレポートで確認できます。

丸投げのサイン5つ
丸投げのサインは、生徒が自分の考えを置かずに、成果物そのものや判断をAIに任せている質問です。ただし、多くの場合は「何を書けばよいかわからない」というつまずきの表れでもあります。見つけたら注意する前に、どこで止まっているのかを読み取り、声かけにつなげることが大切です。
丸投げのサイン5つ(例は作例)
| サイン | 生徒の質問の例 | 読み取れるつまずき | 次の声かけの例 |
|---|---|---|---|
| 1. 課題文をそのまま貼った依頼 | 「高校生のSNS利用時間を法律で制限すべきかについて、800字の意見文を書いて。」 | 書き始めの一歩が見つからない | 「まず、賛成か反対か、一文だけ書いてみよう」 |
| 2. 立場や結論を決めてもらう質問 | 「賛成と反対、どっちで書いたほうが書きやすい?」 | 立場を決めるための材料が足りない | 「自分のSNSの使い方で、困ったことはある?」 |
| 3. 出力を受けて「次も」と続ける依頼 | 「いいね。じゃあ次の段落もお願い。」 | AIの答えを吟味する手順を知らない | 「今の答えで、自分なら変えたい所はどこ?」 |
| 4. 文章全体の書き直しの依頼 | 「この文章をもっと良くして、全部書き直して。」 | どこを直せばよいかがわからない | 「一番自信がない段落を一つ選ぼう」 |
| 5. 「AIっぽくない文」への言い換えの依頼 | 「先生にばれないように、高校生が書いたっぽい文に直して。」 | 評価の目的が伝わっていない | 「この課題で見たいのは、考えがどう変わったかだよ」 |
一つの質問だけで判断しないことも大切です。よく考えている生徒も、例を見たくて「書いて」と頼むことがあります。丸投げかどうかは、その後に生徒が答えをどう扱ったかで見えてきます。
Cognityでは、Jelloに段落を書いてほしいと頼んだ会話に「学業倫理 — AIに丸投げ」のフラグが付き、「その会話へ」から該当のやりとりを開けます。クラス全員の会話を最初から読む代わりに、フラグの付いた会話から読み始められます。

数字は、どの会話を読み返すかを決める手がかりです。高橋さんの場合、つまずきは質問ではなく、説明を自分の言葉に直す段階にありました。
サイン5のような依頼が課題のルールに反するかどうかは、課題ごとに決めておきます。決め方は高校の課題ごとの生成AI利用ルールの決め方にまとめています。
会話を流れで読む3つの視点
会話は、一つの質問ではなく流れで読みます。見るのは次の三つです。
- 最初の質問: 自分の考えを示してから尋ねたか、課題をそのまま渡したか
- 答えを受けた次の質問: AIの答えを確かめたか、問いを絞り直したか、そのまま次へ進んだか
- 書いた文章との関係: 会話で出た論点が、生徒自身の言葉で文章に入っているか
下の画面は、Cognityの採点画面の「会話」タブです。生徒と課題の中のAIチューター「Jello」とのやりとりが、提出物の横にそのまま残ります。

佐藤さんの会話は、自分の立場を先に示し、反論の根拠を確かめ、自分の書き方の強さまで問い直す流れになっています。流れで読むと、反論を想定する力と、AIの答えや自分の言葉を確かめる姿勢の両方が見えます。
ルーブリックの観点にする方法
生徒の質問は、「思考・判断・表現」の観点の評価材料にできます。中央教育審議会の報告は、この観点を、知識及び技能を活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力等を「身に付けているかどうかを評価するもの」としています。※2 評価方法としては、論述やレポートの作成などの多様な活動を取り入れ、「ポートフォリオを活用したりする」工夫を挙げています。※2
AIとの会話の記録も、このポートフォリオの一つとして扱えます。ガイドラインも、課題を出す際には「評価する際の視点を予め設定すること」を挙げています。※1 次の観点を課題の前に生徒に示しておくと、生徒も質問の仕方を意識できます。
観点:AIとの対話を通じた考えの深め方(思考・判断・表現)
評価規準:自分の考えや根拠を示したうえでAIに問いかけ、回答の妥当性を確かめたり問いを絞り直したりしながら、自分の考えを深め、自分の言葉で表現している。
| 段階 | 生徒の姿 | 会話と文章での根拠 |
|---|---|---|
| A「十分満足できる」状況 | 自分の考えを示して問いかけ、AIの回答の根拠を確かめ、反論や問いの絞り直しを経て、主張を自分の言葉で書き直している | よい質問のサインが複数続き、会話で出た論点が生徒自身の言葉で文章に入っている |
| B「おおむね満足できる」状況 | 自分の考えを示して問いかけ、回答の一部を確かめたうえで取り入れている | よい質問のサインがあり、取り入れた内容を自分の言葉で書いている |
| C「努力を要する」状況 | 課題や結論の判断をAIに委ね、回答をそのまま使っている | 丸投げのサインが続き、AIの言い回しがそのまま文章に入っている |
C の生徒への手立ての例は、質問する前に自分の立場を一文で書かせることです。丸投げのサインの表にある声かけを、そのまま使うこともできます。
この観点は、文章そのものの評価と組み合わせて使います。会話だけで評定を決めず、文章の論理や表現の評価に、過程の根拠を加える使い方です。
Cognityでは、この観点を一から書く必要はありません。課題の説明に「Jelloとの会話も評価します。AIに何を質問し、AIの答えをどう確かめたかを見ます。」と書き、ルーブリック画面でAIで提案を選ぶと、説明に沿った基準の案ができます。私たちが3回試したところ、3回とも「内容とアイデア」の4段階すべてにJelloへの質問と回答の確かめ方が入り、この一文を外すと入りませんでした。案を上の評価規準に合わせて直してから使います。

また、学習評価を「教師が判断せずに生成AIからの出力をもって行う」ことは、ガイドラインが不適切な例としています。※1 判断するのは先生です。
総合的な探究の時間で、課題の設定から整理・分析までの過程を評価する方法は、探究学習で生成AIを使うとき、過程をどう評価する?で紹介しています。
振り返りとフィードバックでの使い方
振り返りでは、生徒自身に自分の質問を読み返させます。高校の国語の実践報告では、生成AIの出力に引きずられないよう、自分の考えはどのようなものかを問わせることが、メタ認知に「効果があったようである」と報告されています。※5
振り返りの問い(そのまま使える例)
- 最初にAIにした質問と、最後にした質問を書き写し、何が変わったか
- AIの答えのうち、採用しなかったものとその理由
- AIの答えのうち、自分で確かめたことと、確かめた方法
フィードバックでは、生徒の質問を引用してほめると、何がよかったのかが具体的に伝わります。例えば「3回目の質問で、夜の時間帯の制限に絞ったのがよかったです」という一言です。丸投げのサインがあった生徒には、表の声かけを次の課題の最初に伝えます。
Cognityは無料で始められます。次の課題で試してみませんか?
よくある質問
Q1. 丸投げのサインが見えたら、不正として扱うべきですか?
すぐに不正と決めるのは避けるべきです。丸投げのサインの多くは、立場や根拠が定まっていないつまずきの表れです。課題のルールに反しているかどうかは、課題ごとに決めたルールに照らして判断します。
Q2. 生徒の質問の数や長さを点数にしてもよいですか?
おすすめしません。中央教育審議会の報告は、主体的に学習に取り組む態度について、挙手の回数などの「形式的な活動ではなく」評価するよう求めています。※2 質問も同じで、数や長さではなく、考えをどう深めたかを根拠にします。
Q3. 生徒が学校の外でAIを使った場合は、どう確かめればよいですか?
生徒に記録を提出させるのが基本です。ガイドラインは、生成AIツールの名称、入力したプロンプトや出力、日付などを明記させることを挙げています。※1 ただし、どの部分を提出するかは生徒が選びます。
Q4. 国語以外の教科や探究でも使えますか?
使えます。よい質問と丸投げのサインは、教科を問わず現れます。総合的な探究の時間では、課題の設定や情報の収集の段階で、問いの立て直しがよく見えます。
参考資料
※1 文部科学省 初等中等教育局(2024)「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」 令和6年12月26日、7頁・17頁・18頁・20頁・28頁 ※2 中央教育審議会 初等中等教育分科会 教育課程部会(2019)「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」 平成31年1月21日、8〜9頁 ※3 Lehmann, M., Cornelius, P. B., & Sting, F. J.(2025)「AI Meets the Classroom: When Do Large Language Models Harm Learning?」 arXiv:2409.09047v2 ※4 齋藤 舞桜・徳竹 圭太郎・佐久間 大(2024)「高校生の自力解決型プログラミング学習における生成AIに対するフィードバック要求プロンプトの分類と適用」 CIEC春季カンファレンス論文集 15、35〜40頁 ※5 笠原 諭(2025)「生成AIに出会った高校現場で何が起こっているのか 活用と抑制に揺れながら進んでいくということ」 全国大学国語教育学会 国語科教育研究:大会研究発表要旨集 149、237〜240頁