大学のAI検出ツール、使い続けるべきか|早稲田の対応と文部科学省の通知
AI検出ツールは、使い続けても構いません。ただし文部科学省の通知は、AIが生成した文章かを判定するツールを評価に「活用する場合でも、その結果を過信しないことが重要」としています。※1 早稲田大学はTurnitinのAI表示を2023年12月で終了し、「今後の導入予定はありません」としています。※2 過信できない判定結果に費用をかけ続けるより、学生が書く過程を見るほうが、理解を確かめる近道です。
Cognityは、学生が生成AIと一緒に課題に取り組む過程を記録する、AIの可視化ツールです。本ページでは、早稲田大学の対応と文部科学省の通知、各大学のガイドラインをもとに、AI検出ツールを続けるかどうかの判断基準とリスク、後期の評価を見直す手順を説明します。
早稲田大学がTurnitinのAI表示を終えた経緯
早稲田大学の教員向けWaseda Moodle利用マニュアルには、TurnitinのAI表示について2回の追記があります。※2 2023年5月に利用への注意を促し、2024年1月に終了を告知しました。
| 時期 | 教員向けマニュアルの記載 |
|---|---|
| 2023年5月追記 | AIを使った文章を判定する機能だが「利用には注意が必要」。理由として「英語以外の言語に対応していません」「開発段階の機能です。結果として表示されている数字をそのまま信じ切ることはできません」 |
| 2024年1月追記 | 「2023年12月をもってサービス終了」「現時点では、今後の導入予定はありません」 |
マニュアルには、終了の理由は書かれていません。同じ時期、TurnitinはAIライティング検知機能の無料提供を2023年12月31日までとし、2024年1月からは「Feedback Studio with Originality」の契約者だけが使えるようにしていました。※3
その後、Turnitinは2025年4月に、日本語の提出課題向けのAIライティング検出を「個別のアドオン」として提供し始めました。※4 「英語以外の言語に対応していません」という理由は、今は当てはまりません。
一方で、数字を「そのまま信じ切ることはできません」という指摘は、文部科学省の「過信しないこと」と同じ方向です。Turnitin自身も「不正行為の判定を行わず」、AIライティング指数は「判断材料として活用するもの」としています。※3 日本語の文章で検出ツールがどこまで当たるかは、AI検出ツールで生成AIの使用は見抜ける?文部科学省・大学の見解と確認の方法にまとめています。
検出の代わりに各大学が示していること
各大学のガイドラインは、検出よりも、課題の設計と評価の組み合わせ、学生への確認の手順に重点を置いています。東京大学は検出ツールの結果を、学生が不正に利用した「証拠としては不十分」としています。※5
| 大学 | ガイドラインの内容 |
|---|---|
| 東京大学(2023年) | 検出ツールは過信しない。結果ではなく「解答を得る過程が重要」であることを学生に説く。安易に解答が得られない課題・出題形式を検討する※5 |
| 上智大学(2025年) | 検出は「100%ではなく、誤検出の可能性」がある。レポート等の非対面課題の評価比率を下げ、「学びのプロセス」に基づく評価を取り入れる。疑わしいときは、箇所の特定、学生との面談、追加の確認の順に進める※6 |
| 京都大学(2026年) | 生成AIの利用方針をシラバス等で事前に示す。レポート課題とあわせて筆記試験・口頭説明・実演などを用いる。学生には「作業プロセスの記録を保存すること」を求める※7 |
三つに共通するのは、判断の拠り所を検出の数字から、授業ごとの方針と学びの過程へ移していることです。また、上智大学と京都大学は、検出ツールに頼らない評価の具体策まで示しています。
AI検出ツールを続けるか、やめるかの判断基準
続けても構いません。ただし、判定結果だけで不正行為を認定しないことが条件です。文部科学省の通知は、判定ツールを評価に活用する場合を想定したうえで、結果を過信しないよう求めています。※1
続ける場合は、次の三つを先に決めておくことが重要です。
- 判定結果の位置づけ: 不正行為の証拠ではなく、確認のきっかけとして扱う※1※5
- 学生への周知: 検出ツールを使うかどうかと、その結果をどう扱うかをシラバスで示す※1※7
- 確認の手順: 判定が高く出たときは、該当箇所の特定、面談、追加の確認を経てから判断する※6
この三つを守ると、検出ツールにできるのは、もう一度丁寧に読むレポートを選ぶことまでです。学生が理解しているかどうかは、結局、書く過程や口頭での確認で確かめることになります。はじめから過程が見える仕組みがあれば、検出ツールに費用をかける理由は小さくなります。
やめるとき・続けるときのリスク
リスクは、やめること自体より、判定結果を前提に組まれた手続きをそのまま残すことにあります。続ける場合のリスクと並べると、次のようになります。
| やめるとき | 続けるとき | |
|---|---|---|
| 不正行為の判断 | 手続きが判定結果を前提にしていれば、判断の拠り所がなくなる | 誤判定への異議申し立てが起こりうる。ベンダー自身も判定はしないとしている※3 |
| 教員 | 教員が個人で別の検出サービスを使い始め、基準が科目ごとにばらばらになる恐れがある | 理解を確かめる時間が、AIを使ったかどうかの見極めに回りやすい |
| 学生 | 方針を示さずにやめると、「もう使ってよい」という合図に受け取られる恐れがある | 判定を避けるための言い換えに労力が向き、学びにつながらない恐れがある |
| 運営 | 口頭での確認や過程の確認に時間がかかる。履修者の多い科目ほど大きい | 日本語の検出は個別のアドオンで、契約と管理の費用が続く※4 |
やめるときのリスクは、どれも準備で小さくできます。その準備が、次の手順です。
評価を見直す6つの手順
検出ツールを続けても、やめても、手順は同じです。文部科学省の通知と各大学のガイドラインが共通して示す順に並べました。
後期の評価を見直す6つの手順
- ステップ1:授業ごとの方針を示す 生成AIの利用の可否と、反した場合の措置をシラバスで示す。※1※7
- ステップ2:課題を見直す 生成AIで安易に解答できる課題を避け、学生自身の経験と学習内容を結びつける課題などに変える。※5※6※7
- ステップ3:過程を提出させる 利用した生成AIの種類・箇所を明記させ、作業の過程も記録として残させる。※1※7
- ステップ4:評価方法を組み合わせる レポートだけに頼らず、小テスト、口述試験、筆記試験などを併用し、非対面課題の比率を下げる。※1※6※7
- ステップ5:疑わしいときの手順を決める 判定結果は確認のきっかけにとどめ、箇所の特定、面談、追加の確認を経て判断する。※1※6
- ステップ6:教員を支える シラバスの記載例や評価の工夫をFDで共有し、方針を継続的に見直す。※1
期末レポートの出題と採点の工夫は、レポート試験と生成AI|期末に出すときの出題・採点の工夫と大学の規定で詳しく紹介しています。
教員の負担が最も大きいのは、ステップ3です。京都大学のガイドラインは作業プロセスの記録を学生自身に保存させていますが、学生が別の場所でAIを使えば、提出される記録は本人が選んだものになります。※7 本人が書き写さなくても、過程がそのまま残る仕組みが必要です。
書く過程を記録に残す方法
生成AIを使う場所と文章を書く場所を一つにすると、記録は自然に残ります。Cognityでは、学生は課題の中でAIチューターのJelloと対話しながらレポートを書きます。教員は提出物の横で、「会話」タブと「アクティビティ」タブから、その対話と書く過程を確認できます。


CognityはAIの検出も、不正らしさのスコア付けもしません。示すのは、Jelloの発話と一致した部分と貼り付けられた部分の文字数で、どう評価するかは教員が決めます。ステップ3の過程の記録を、学生の自己申告ではなく実際の記録として受け取れる点が、検出ツールとの違いです。
記録から何を評価できるか、Cognityにできないことまで含めて、大学向けCognityで詳しくご覧いただけます。
Cognityは無料で始められます。次のレポート課題で試してみませんか?
よくある質問
Q1. 早稲田大学はAI検出ツールの利用を禁止したのですか?
禁止を示した文書は確認できませんでした。教員向けマニュアルに、TurnitinのAI表示が2023年12月で終了し、今後の導入予定はないと記されています。※2
Q2. TurnitinのAI検出は日本語のレポートにも使えますか?
使えます。2025年4月から、日本語の提出課題向けの機能が個別のアドオンとして提供されています。※4 判定の精度と限界は、AI検出ツールで生成AIの使用は見抜ける?をご覧ください。
Q3. 判定結果が高ければ、不正行為と認定してよいですか?
避けるべきです。文部科学省は判定ツールの結果を過信しないよう求め、東京大学も不正利用の「証拠としては不十分」としています。※1※5 上智大学のように、面談と追加の確認を経てから判断する手順を決めておくことが大切です。※6 学生に生成AIの利用をどう書かせるかは、レポートでの生成AI利用の明記の仕方にまとめています。
Q4. 文部科学省の通知に従う義務はありますか?
通知は、大学・高専の対応の「参考となるよう」まとめられたものです。※1 各大学が教育の実態に応じて「主体的に対応」することを求めており、方針は大学ごとに決めます。授業ごとの評価の工夫は、生成AI時代の大学レポート課題で比べています。
参考資料
※1 文部科学省 高等教育局(2023)「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」 令和5年7月13日事務連絡、別紙1〜2頁 ※2 早稲田大学(2024)「09-01-01. Turnitinについて」Waseda Moodle利用マニュアル(教員向け) 2023年5月・2024年1月追記、2026年10月19日確認 ※3 Turnitin Japan(2023)「AIライティング検知機能について」 2026年10月19日確認 ※4 Turnitin(2025)「Turnitin、日本語の投稿にAIによる文章検出を導入」 2025年4月4日 ※5 東京大学(2023)「AIツールの授業における利用について(ver. 1.0)」 [3][4][5] ※6 上智大学(2025)「教育における生成AI利用に関するガイドライン」 3頁 (2)(3) ※7 京都大学(2026)「京都大学の教育・学修における生成AI利用に関するガイドライン」 4.(1)(2)